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松枯れ対策「ネオニコ空中散布」の問題点
『松枯れ白書』
​       高砂緑地問題研究会 松本文雄 著
 

http://www.web-japan.to/book/review_matsugare.htm 
第1篇 ● 松枯れ主因は大気汚染:高砂市内を事例として考察する 
● 第1章 松枯れのメカニズム 
● 第2章 松枯れ主因は大気汚染公害 
● 第3章 松枯れ・農薬空中散布問題の行政の対応 
● 第4章 青松の復活提言および実践活動 
● 第5章 若干の考察 

第2篇 ● 松枯れは日本人への警鐘:持続社会の構築に向けて 
● 第1章 最近のTV報道 
● 第2章 百害無益な農薬空散 
● 第3章 最近の松枯れ調査結果 
● 第4章 松枯れのしくみ 
● 第5章 青松復活への13の提言 


● "虫因説"の誤りを指摘 (日本農業新聞/1998年3月16日掲載) 
日本全土に広がっている松枯れの原因について、虫因説と大気汚染公害説が対立している。同書は、大気汚染公害説を主張する著者が、24年間の現場調査や研究結果、著述などを集大成。一貫して林野庁のマツノザイセンチュウによる虫因説の誤りを指摘している。地道な実態調査の積み重ねに裏付けられた指摘は、とかく「感情的」と見られがちな大気汚染公害説に説得力を与えている。そして、林野庁が「松くい虫」(マツノザイセンチュウの総称)による虫因説に固執するのは、農薬散布のため「愚挙」と断罪。国家の犯罪性に結びつけている。「白書」の題名は「本来、政府が行うべき報告の代役の意味」を込めた。 

● 主因は大気汚染 (兵庫新聞/1998年3月18日掲載) 
20数年間にわたり、松を観察しつづけ、松枯れの原因を追究している高砂市の高砂緑地問題研究会世話人の松本文雄さん(58)がこれまでの研究成果をまとめ、松枯れの主因は大気汚染とする『松枯れ白書』を出版した。松本さんは、自宅庭にあった樹齢100年余りの松を守ろうと、昭和40年代から松枯れ問題に取り組み始めた。白書は、市内の枯れ松の地域分布やマツクイムシの検出結果、年輪調査の結果を掲載。また、国会の経過や行政の対応、テレビ報道や各種論文をもとに、松枯れのメカニズムを論じ、「松枯れの最大の原因は大気汚染であり、マツクイムシは弱った松にとどめを刺すにすぎない」と結論づけている。 
松本さんは「虫因説」による農業の空中散布は、大気汚染を隠ぺいした生態系を破壊する行為だとして、農薬空中散布に反対。農薬という対処療法にたよらず、総合的な大気汚染対策により空気を浄化することで、青松を復活させたいとしている。 ● 松枯れ白書を出版。高砂の松本さん (神戸新聞/1998年3月17日掲載) 
25年間の研究集約「大気汚染」前面に 
松枯れの原因は大気汚染であると訴え続けてきた、市民グループ「高砂緑地問題研究会」世話人で高校教諭の松本文雄さん(58)がこのほど、約25年間の活動や研究の成果をまとめた『松枯れ白書』を出版した。松本さんは「松枯れ問題の真実を、松の名所である高砂から全国に発信したい」と話しており、3月22日には同問題の今後を考えるシンポジウムを開く。松本さんは、1973年からこの問題に取り組んでおり、昨年12月に高砂市に対し、松の保護などを訴える「環境提言」を提出している。『白書』では、松枯れの原因は、いわゆる松くい虫の「マツノマダラカミキリ」や「マツノザイセンチュウ」によるものではなく、これらの虫は、大気汚染により弱った松にとどめを刺すにすぎないことを、例を示しながら指摘。また農薬の空中散布に無駄な金を費やした行政を批判。このほか公害による松枯れ状況や、農薬の空中散布による人や動物への被害といった情報の公開などを求める13の提言で結んでいる。 


長野県大町市在住の八木 聡 (やぎさとし)さん〜ひと粒舎代表、大北林業研究グループ副代表は、これまでのあいだ、松枯れ対策の農薬空中散布問題に取り組んでこられ、ご自分で日本中を取材し、一枚のDVDにまとめました。その八木さんが松枯れ問題について、わかりやすく解説している文章がありますので、掲載します。(初出はミニコミ紙「平和の種」)〜Facebook「松本の松枯れを考える住民の会


「松枯れ」をきっかけに里山再生を 八木 聡

都会で生まれ育った私には、小さい時から自然に対する憧れがありました。山好きの両親に連れられ、ハイキングをたくさんした楽しい思い出が、自然に対して憧憬の念を抱くきっかけになったのだと思います。植物があり、動物がおり、昆虫がいて、菌類がいて…それらが絶妙なバランスを保って存在している。

 大学は農学部森林科学科を専攻し、学生時代に松枯れ対策の空中散布を知った時には、私の中で漠然とした違和感を抱いたのを記憶しています。畑に農薬をま撒くならまだしも、山に農薬を撒き、松を守るために虫を殺すとの考えは、どうしても受け入れることができませんでした。それから20年ほどの月日が経ち、私が住む大町市にも松枯れの影響が少しずつでてきました。当時市議会議員だった私は、大学時代の思いもあり、この問題に取り組むことを決めました。

松枯れ対策の学習を始めるとわかるのは、全体をもうら網羅したテキストがないということです。松枯れの原因に関する本や農薬の危険性を問う本はあるのですが、それだけでは全体を理解することができません。講演会に参加し、関係者にインタビューをすることによって、徐々に全体像が理解できました。また、説明会に参加し、住民間の空中散布の是非をめぐる激しい争いを目の当たりにして、松枯れを考える前提となる共通認識を広める必要性を強く感じるようになりました。そのような理由もあり、仲間とDVD「松が問いかけること」を製作しました。

 農薬の空中散布の是非を考えるにあたり、論点は大きく4つあります。

①松はなぜ枯れるのか、
②健康被害はあるのか、
③松枯れに効果があるのか、
④対策、です。

住民説明会ではこれら論点がごっちゃに出されるために、相互理解がすすみません。まずは、住民が正しい知識を得て、総合的に対策を判断していくことが何よりも大切だと思っています。

 一般的に松枯れは、北米から九州に明治時代に渡ってきた「マツノザイセンチュウ」が「マツノマダラカミキリ」をばいたい媒体にして広まり、松枯れが起こると思われています。行政の担当職員はその原因しか説明しません。その他には、戦後植林した松が寿命の時期に来ている、大気汚染による酸性雨、や痩せた土地を好む松林の手入れをしないことによる栄養化などがあります。私は、センチュウが大きな原因であることは認めつつも、場所によっては大気汚染などその他の原因、あるいは複合的原因で枯れていると考えています。単に媒介者となる「カミキリを殺せ」と農薬をまくことでは、論理的に考えて松枯れは解決できないし、実際にできていません。

 ここ数年で、空中散布する薬剤はネオニコチノイド系農薬(以下ネオニコ)に変わりました。ネオニコの方が対外的影響は小さいと思われているからです。しかし、ネオニコの持つ特徴として、「影響が持続する」「浸透する」というものがあり、昆虫などへの影響はむしろ大きくなっていると思われます。また人が短時間に農薬を吸った時の影響は、従来の農薬もネオニコチノイド系も大差がないとの専門家の指摘もあります。さらに、ヘリコプターに搭載する量には制約があることから、農薬を高濃度で撒かざるを得ない空中散布は、化学物質過敏症の患者だけでなく、一般の人への健康被害も強く懸念されます。

 農薬は、田畑では病害虫への効果があることから、松枯れにおいても効果があると思われがちですが、実際のところ効果ははっきりとはわかっていません。昭和52年4月に制定された、有人ヘリで農薬を撒く根拠となる「松くい虫防除特別そち措置法」の国会の審議過程で、担当所管から提出された「農薬散布は効果がある」との9つの事例では、7つの事例の資料のねつ造・改ざんが発覚(残り2つは情報不開示により不明)しました。

これが象徴的できごとであり、その後もごまかしが相次いでいます。また実証実験も3年などの短期間であり、これでは農薬散布に防除効果があるとは言えません。
 
 それでは私たちは、松枯れに対してどのような手段がとれるのでしょうか。長野県林務部は「守るべき松」には、「農薬空中散布による予防」と「枯れた木の駆除」との手段をとっています。わかりやすく例えるなら「ガンにかかったら抗がん剤治療」と言っているようなもので、かなり荒っぽい考え方です。患者の年齢、病気の進行状況、考え方によって治療法を選択するように、地理的条件、所有者の考え、価値、進行状況などにより、手段を選択すべきです。 

 例えば神社仏閣にあるような文化的歴史的に価値のある松は、薬剤のじゅかん樹間ちゅうにゅう注入や、炭などの土壌改良剤を土に混ぜるなどの対策が考えられます。土壌の改良で松が元気になり、松枯れの進行を止めることができるケースもあります。

もっと詳しくお知りたい方はDVDをご覧ください。

ドキュメンタリー映画「松が問いかけること」DVD 
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お求めは直接八木さんへ メール yagi@shiftra.jp

#八木聡

兵庫県議会で丸尾牧議員「農薬空中散布」質問

兵庫県議会で過去に3度予算決算特別委員会で、農薬空中散布について質疑をしまし
た。5年間ほど農薬空中散布直後に散布地域に行き、健康被害調査アンケートも行いました。
兵庫県議会議事録 

http://www.kensakusystem.jp/hyogopref/cgi-bin3/ResultFrame.exe
平成25年度予算特別委員会


一部制度を改善して、この新年度に臨むということである。いろんな制度の周知にも力を十分注いでいただいて、制度の利用の拡大に努めていただきたいと思う。 
 次に、松枯れ防止のための農薬空中散布についてお伺いする。 
 全国では、松枯れ防止のために行う農薬空中散布は、地上散布、木に農薬を入れる樹幹注入、生物農薬、あるいは樹種転換などに切り替えられ、年々、散布面積は大きく減少していっている。その全国の流れに沿うように、延べ散布面積が全国第1位をキープし続けている兵庫県でも、散布面積は減ってきた。それでも、2011年度で見ると、兵庫県の散布面積が全国の15%程度を占め、農薬空中散布王国の座を譲ることはない。 
 そこで、私は2008年から、農薬空中散布後の健康被害アンケート調査を毎年、場所を変えながら実施してきた。参考までに、2008年度から散布されている農薬は、チアクロプリド水和剤で、ネオニコチノイド系の農薬の一種と言われている。そのアンケートの中では、健康被害の可能性を示唆した人は、2008年、2009年、2011年と3回あり、計10名の方がいらっしゃった。いずれも医者の診断を受けたものではないので、因果関係の証朋はできていない。 
 農薬空中散布の賛否については、総数では賛成が上回るが、地域ごとで見ると、5ヵ所のうち2ヵ所で反対が賛成を上回っており、反対も一定数いることが分かる。ただ、サンプル数が少ないので、これはあくまで参考にしかならない。 
 なお、ネオニコチノイド系農薬については、安全だという意見がある一方、蜂だけではなくて人間の脳も侵され、発達障害の原因の一つになる可能性もあると話している脳神経科学者も存在している。また、アンケートの中では、農薬空中散布の時期から体調が悪くなるのでやめてほしいとの化学物質過敏症の方の意見もあった。 
 2011年度、長野県では、農薬空中散布について、住民からパブリックコメントをとるなど住民の意見を聞いて、化学物質過敏症の人や小児等への影響については分からないが、影響の可能性を否定することもできないと考えられるため、より安全性の確保が求められるとの考え方をまとめた。そして、可能な場合は、農薬の空中散布は、住宅地から200メートル離した上で、道路沿いから150メートル以内では他の予防方法を活用、空中散布の風速の制限を秒速5メートルから秒速3メートルへと強化、より安全性の配慮が必要な場合には、有機リン系以外の薬剤使用を選択する。散布実施地から1キロメートル以内の集落・河川などで必要な場合は、気中濃度調査、水質調査を実施するとしている。 
 また、従来から、農薬空中散布の住民への周知では、散布後1週間程度は散布地域に入らないこと、山菜等はとらないこと、農作物、牧草等は使用しないこと、ミツバチを疎開させることなどを伝えている。 
 全国的にも、松枯れ防止の農薬空中散布の散布面積、事業費が減っている中、私は、兵庫県においても最低限、長野県に準じた対策とパブコメなどの対話手法をとるべきだと考えている。県当局の所見をお伺いする。
 

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